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 孤独を感じ心に悩みを抱えたまま、誰にも相談できずに苦しんでいる人が、年齢を問わず大人も子どもも増えているという。カウンセラーとしてそんな方々の相談を数多く受けてきたお二人に、そこから見えてくる現在の家庭における問題点をうかがった。

■夫と妻、親と子が互いに向き合える関係を築く
NPO法人ウィメンズカウンセリングちば 代表理事 中川みさ子さん

何が問題なのか気づくことが大事
 家庭は人間関係の積み重ねによって時間をかけて形成されたものであり、どの家庭にも長い歴史があります。夫婦関係や親子関係などに悩んでカウンセリングにやって来る人も、実はその悩みの原因が、自分でも気づかない遠い過去のできごとに起因していることがよくあります。
 カウンセリングでは夫や子どもに対して「一体何を考えているのかわからない」という不安や悩みが少なくありません。しかし、話を聞いてみると、問題を解決するために具体的に取り組んでいないケースが多いのです。夫婦間のコミュニケーションが知らぬ間に行き詰まっても、互いに向かい合うことはしていないのです。
 子どもが生まれると妻の生活が大きく変わり、結果的に夫だけが家族から遊離してしまうことがあります。また夫婦2人だけの生活に、姑や舅、子どもなどが入ってくると、新たな関係を築くことができない人も増えているように感じます。本来なら一人では乗りきれないことも家族がいるから乗り切れるものが、今はまったく逆になっているのです。その背景には、核家族化などの影響で人間関係の経験やコミュニケーション能力が不足していることも一因です。



向かい合うためのコミュニケーションを
 コミュニケーションで大切なことは、相手が何を伝えようとしているのか、先を急がずにじっくりと聴くことです。また、自分の気持ちを言葉で伝えることも大切です。そのためには、言葉にする前に気持ちを一旦整理することが有効です。しかし、これがうまくできないときは相手と距離を置くことも必要です。
 「ウィメンズカウンセリングちば」の活動の一つにアサーティブトレーニングがあります。これは相手の気持ちを尊重し、さらに自分の気持ちを大切にするコミュニケーションのためのトレーニングです。このトレーニングを通して自分の気持ちの整理の仕方を身につけることができます。
 夫婦とは本来対等であり、ともに人生設計を考えていくパートナーです。しかし現状には、夫婦も親子も相互依存する傾向があります。そして、どちらか一方が支配しようとした時、問題が起こります。家庭は、親も子どももそれぞれが、一つの独立した人格として、自立した存在であることを認め合うことが大切です。



NPO法人ウィメンズカウンセリング
TEL043-224-7909.
カウンセリングは要予約
受付:月〜金の10:00〜17:00
料金:初回5250円、2回目移行4200円



◆◆プロフィール◆◆
「フェミニストカウンセラー養成講座」を受講後、有志とともに「ウィメンズカウンセリングちば」を設立。県内初の女性のためのカウンセリングルームとして、女性の問題を幅広く扱っている。


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■子育ては”無駄”が大切、慌てず急がず遠回りを
臨床心理士・応用心理士 中原弘之さん
道草をしながらのスローな子育て
 子どもを取り巻く社会は情報化、高学歴化の競争社会。子どものペースに任せておいたのでは効率が悪いと考えた親は、いつの間にか子どもを管理し、常に「早くしなさい」と子どもを急かします。それでもスピードが上がらなければ、ついには子どもの手を引き、抱きかかえて親が走り出してしまうのです。そしてようやく先頭に立ち、抱いている子どもを下ろした時、自分の足で歩いた経験のない子どもは一人では歩くことができない――。今日の教育はそういう状況にあります。
 効率化を優先するあまり、欠けてしまったのが実体験です。すべてを観念的にお膳立てされてしまうと、子どもは自分で考えることも、最後までやり遂げた成就感を味わうこともありません。「生命を大切に」と言葉で概念を教えられても、動物や人の死に触れたことがないのでそれを実感できない。ケンカをすることがないので痛い思いをすることもなく、歯止めが育っていないのです。しかしこうした実体験こそ、感情をコントロールするための訓練。無駄と思わず、失敗しながらでもやり遂げるのを応援し見守ってあげてください。


子どものしつけに親は責任を持つこと
 最近の子どもたちを見ていて感じるのは、しつけは幼稚園や学校、勉強は塾に任せ切りにする“外注教育”の増加です。学級崩壊が増えていますが、これも親が3歳までの子どものしつけに責任を持たない“外注教育”の弊害だと思います。
 自分のやりたいように行動することを“個性尊重”“自由”と混同している大人が増えていることも問題です。物事の良し悪し、我慢すべきことなど、守るべき社会の基本ルールは、親が家庭で教えるものなのですが、それがなされていない。自動車に例えれば、道路交通法を守らずに一人ひとりが好き勝手に運転したら安全は崩壊します。家庭のしつけも同じです。


冷静な言葉ではなく共鳴を求めている
 感情的になりがちな子どもと、冷静に受け止めようとする大人では、お互いにかみ合わないことがよくあります。例えば幼い子どもの場合、転んで泣き叫ぶ子どもに母親は「こんな傷は平気よ」と慰めます。しかし、実は子どもが泣いているのは痛みのせいではなく、母親に痛みをわかってほしいから。痛みをわかってもらえなかった子どもは悔しさでさらに激しく泣き叫びます。
 この関係は子どもが成長しても同じです。親は子どもの言葉に耳を傾け、まずは共鳴し、共感することが大切です。勇気づけ、アドバイスをするのは最後でいいのです。
 また、子どもが繰り返し問題行動を起こすような場合には、すぐに叱りつけるのではなく、理由を考えてみましょう。原因は親が作っていることが多いのです。


親の生き様を見せる家庭生活の工夫を
 昔の家庭は親の苦労が子どもの目に見えていたため、子どもは自然と親に感謝をしていました。現代は親の苦労が子どもに見えづらく、感謝の気持ちを植える機会が少なくなっています。だからこそ、家族で知恵を絞って、家庭生活の中でそんな機会を作る工夫をしてほしいと願っています。例えば、最近増えている自宅出産、農業やアウトドア体験などもその一つ。一生懸命生きようとする生の人間の生き様を子どもに見せ、生きていくことの大変さが子どもに伝わる生活を送ることが、子どもの「生きる力」を育みます。




◆◆プロフィール◆◆
昭和4年生まれ。茨城大学文理学部卒業。昭和50年茨城大学教授。定年退官後、同大学名誉教授。茨城キリスト教大学教授を経て、現在は病院と学校でカウンセリングを担当。専門は発達心理学、家族心理学。

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