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 今回、お話をうかがったのは、今夏の第87回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場した千葉県代表の銚子商業高校と、茨城県代表の藤代高校の監督です。指導者という立場から高校生を見てきたお二人に、野球の指導現場で感じる親と子の関係や家庭のあり方、野球の指導を通して選手たちに伝えたいことなどを語っていただきました。

■気配り、心配りの心を大切にし
 野球を通して人間性を育てたい
千葉県立銚子商業高校硬式野球部監督 齊藤俊之さん
顔写真

 今夏、10年に夏の甲子園出場を果たした古豪・銚子商業高校。齊藤監督は会社勤めをしながら、選手の指導に当たっています。

人は気持ちで変われることを野球で実感

 野球の指導で重視しているのは人間教育です。選手たちはいずれ社会に出ます。そのときに社会で愛され、認められる人間になってほしい。だからチーム作りでは、気配りや言葉遣いの指導を徹底しています。
 そして、野球を通して学んでほしいのは、気持ち一つで人は変われるということ。「勝ちたい」「甲子園に行きたい」という強い意志をもって戦ったこの夏、選手たちはそのことを実感しました。そのことが、これから先の長い人生において、必ず生きるはずです。

我が子だけでなくチームを応援してほしい

 高校野球に限らず、今のスポーツ指導者が共通して言うのは「親からの圧力が気になる」ということです。「なぜうちの子を使ってくれないのか」と責められたという話をよく聞きます。
 今は本人以上に親が一生懸命になりがちです。我が子が試合に出ることが最優先で、チームはそっちのけ。試合に出られなかったとき、一番悔しい思いをしているのは選手本人のはずなのに、本人よりも親がショックを受けてしまって、我が子をフォローできない。それが行き過ぎると、選手へのプレッシャーになったり、チームの不和へとつながることもあります。
 だから、野球部への入部を希望する生徒、保護者への説明会では、指導方針の説明会とあわせて「息子だけでなく、まわりも見てください」とお願いすることもあります。

気配りや言葉遣いは野球以上に厳しく指導
ダメなことはダメと
気持ちを込めて叱ること

 最近、気になるのは、ダメなものをダメと、親が子どもにはっきりといえない雰囲気があることです。親が子どもに気を使い、ものわかりよくなり過ぎているような気がします。
 選手の指導は、押さえつけてもダメですし、おだて過ぎてもうまくいきません。そのバランスがとても大切です。親と子の関係も同じではないでしょうか。叱るときはしっかり気持ちを込めて叱ること。信頼関係が築けていれば、気持ちは必ず伝わるはずです。
 そして、今の家庭に大切なのは、親子の絆だと思います。親が一生懸命に生きている姿を子どもに見せていれば、子どもは自然と親を尊敬します。絆や信頼関係はそうやって育まれていくものではないでしょうか。

◆◆プロフィール◆◆
1959年銚子市生まれ。銚子商時代の1976年(昭和51年)夏と1977年(52年)春の2回、甲子園に出場。中央大学卒業後、1982年鹿島石油入社。2001年6月、同社を退社しトラヤ入社。銚子商野球部監督就任。


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■苦しさ、悔しさに耐えて成長する
 我が子を少し離れた場所から見守ってほしい
茨城県立藤代高校硬式野球部監督 張替剛次(はりがい・たかし)さん
顔写真

 選手権大会初出場を果たした藤代高校。同校の監督11年目となる張替さんは、公民教諭の傍ら野球部の指導を行っています。

いろいろな経験を経て子どもは成長していく

 約20年、軟式と硬式の野球部の監督をやっていますが、3〜4年前から、子離れができない親が増えているように感じます。
 子どもは少年野球から中学、高校と進むに伴い、練習の苦しさ、試合に出られない悔しさを経験しながら成長していきます。けれど、親は必ずしも成長しているとはいえないことがあります。苦しさや辛さに耐えて成長していく息子を見守ってほしいと思うのですが、親自身がその辛さに耐えられなくなってしまうのです。まるで、子どもと一体化しているかのようです。

苦しむ子どもの姿に親も耐えてほしい

 最近、友達のような関係を強調する親子が増えています。悪いことだとは思いませんが、親の役目は子どもと仲良くすることではなく、よりよく成長してもらうこと。それには、苦難も必要です。「辛そうでかわいそう」と同情するのは、がんばっている子どもに対して失礼。一歩離れたところから、がんばっている子どもを見守ってあげてほしいのです。
 例えるなら、選手が花木なら、私たち指導者の役割は水を与えること、そして親は肥料です。肥料が根に接すると花木は腐ってしまいますが、なければ大きく育ちません。

怒るときは冷静に、しかし本気で怒る
怒るときには冷静に、
本気で叱ることが大切

 家庭でもスポーツでも、大切なのは信頼関係です。野球の試合や練習でも、信頼関係がなければ選手を怒ることはできません。そして、怒るときには選手に上達してほしいという気持ちが前提にあります。本気で怒らないと気持ちは伝わりません。感情にまかせるのではなく冷静に、本気で怒ることが大切です。
 野球の指導を通して、私は選手たちに勝つ喜びを与えてあげたいと思っています。勝つためには、真剣に練習に取り組むことが必要です。そして、一生懸命練習に取り組んでいれば、たとえ試合に負けても選手の心には必ず何か残ります。そのことを親にも理解していただければと思います。

◆◆プロフィール◆◆
1961年茨城県生まれ。高校時代はブラスバンド部に所属。1984年3月茨城大学卒業後、教員に。藤ケ崎一高軟式野球部で8年間、並木高校軟式野球部で3年間監督を務めた後、1995年に藤代高校硬式野球部部長、2004年に同部監督。


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